お灸

鍼・灸を用いて生体の自然治癒力(人体自ら病気を治そうとする働き)を高め、いろいろな疾患・症状の改善はもちろん、疲労回復や健康管理などの目的においても、古来より広く慣れ親しまれてきた治療法の一つです。
お灸は血の流れを良くし、鍼は気の乱れを調整する医術として発生したと古来より考えられています。ヒトは体の調子が崩れてきたとき元に戻りたいという現象として「症状」が表れます。この時はまだ体力があります。鍼 治療で大丈夫です。身体を休めずに同じ生活を続けると体内で熱を作る力が衰え冷えを受けやすい状態になります。灸 治療が必要です。
体力のある病気の人に対しては鍼治療単独で緩解する場合がありますが、体力を消耗し身体が冷えを感じている人や、長期間患っている病気の人など、何らかの関連で灸治療を並行して行なうと効率よく症状がよくなっていくケースが多いです。そのため、体調が少しくずれた患者からガン患者まで鍼灸治療が幅広く適応なのはこんな理由からです。
1400年以上昔、中国から日本に伝えられたといわれる“鍼(はり)と灸(きゅう)”。現在、国際的に鍼灸といえば、専ら中国伝統医学(Traditional Chinese Medicine: TCM)のことを指しますが、“はり”も“きゅう”もわが国の気候と民族性、社会背景などの影響を受け、元祖中国とは別に独自の発展を遂げました。事にお灸にいたっては、現在の中国ではほとんど日本のようなお灸はしません。古くは中国でも日本でも同じ方法だったのでしょうが、現在の中国で“灸”といえば、刺した鍼の柄にもぐさを巻き付けて火をつける“温針wen zen”(日本の灸頭鍼に相当します)などを指します。つまり、現在も日本で行われている、皮膚に直接もぐさの塊を乗っけて火をつけるというやり方は、日本においてその効果の高さが認められ伝承されてきた結果、いまだ廃れずに存在しているものです。

お灸の効果

お灸が身体にどのような影響を及ぼすのか、実のところ、人に対する作用の研究はあまり進んでいません。しかし、動物を用いた実験によれば、外敵から身体を守る働きを持つ“白血球”の一部が活発に働くようになると言われており、このことから、“お灸は免疫力を高める効果がある”と考えられているわけです。 

  • お灸の効果

第一は、経絡に対する刺激
第二は、火傷を利用しての温補効果
第三は、白血球の増加とアルネット核の佐方偏位、つまり白血球の増加や若返りによる食菌作用の活性化や火傷により、その部位にヒストトキシンという有効な物質が出来る事がこれまでの実験的研究で解明されています。
さて体にやさしい治療室で行っているお灸は、 全身のツボに心地よい熱さのお灸を少数ずつ据える“透熱無痕灸”です。ひねったもぐさの大きさは、お米粒の半分程度といわれる“半米粒大(はんべいりゅうだい)”です。昔のお灸のイメージである、戒めや懲らしめに使う大きくて熱いお灸や、一箇所にたくさんのお灸を据えてやけどの痕を残してしまうお灸とは違い、患者さんに負担の少ない効率的なお灸です。